株式会社十全社の代表にインタビュー。見たくない現実が見えた時こそ新たな挑戦をするタイミング
公開日:2024-05-30
今回は株式会社十全社の伊藤様にインタビューを行いました。
異業種から葬祭業界へ挑戦した際のお気持ちや、業種に捉われない新事業の立ち上げなど興味深いお話を伺いました。


穴太ホールディングス 株式会社十全社
代表取締役 伊藤 和彦さん
祖母の葬儀をきっかけに葬祭業界へ挑戦。
現在は葬祭業だけでなく、農繁期にはグループ企業で田植え機・コンバインのオペレーターやその他の農作業も担当している。



伊藤様のご経歴。親族の葬儀をきっかけに葬祭業へ

本日はお時間をいただきありがとうございます。
まずは伊藤様のこれまでのご経歴を教えてください。

伊藤:葬儀業界に挑戦する前は、工場や建設会社に建設機器をレンタルする会社で営業をしておりました。
そこでは営業のほかに店舗運営の勉強もさせていただきました。

葬祭業界を目指したきっかけは、祖母の葬儀を経験したことでした。
鋸南町のあたりが地元なのですが、葬儀でお世話になったのが十全社と十全社の葬儀ホールだったんです。

その際、担当の方が本当の家族のようにとても親身に対応してくださいました。
葬儀が終わった後、感謝の気持ちで胸がいっぱいになりました。
「葬祭業はすごく感謝してもらえるやりがいのあるお仕事なんだ」と思い、葬祭業に強く憧れを抱いたのを覚えています。

その気持ちのまま履歴書と職務経歴書を書いて、十全社の中途採用求人に応募しました。

なるほど、お客様と葬儀社の関係からスタートされたんですね。
伊藤:そうなんです。
葬祭業は「人に感謝されるお仕事だ」というのはもちろんですが、十全社の「成果別個人主義」という考え方が自分に合っていると感じました。
過去の経験や経歴にこだわらず、将来に向けて今努力する人が報われるという意味です。私の座右の銘でもある「過去は運命、未来は可能性」に重なると感じたんです。 まさに全く異なる環境から葬祭業にチャレンジする自分にぴったりだと思いました。

「ぜひここで仕事をしたい」という思いがさらに強くなり、2010年に十全社に入社することになりました。

入社してから現在まで、特に印象に残っていることや苦労されたことはありますか。
伊藤:強く印象に残っているのは、若くしてお父様を亡くしたご遺族の葬儀ですね。
お父様が亡くなったあと病院へお迎えに行き、ご自宅に安置していました。
ところが暑い季節だったため、ご自宅で安置し続けることが厳しい状況になってしまったのです。
日程的にまだ余裕がありましたが、ご遺体が傷むのを防ぐために先にお預かりさせていただくことになりました。

ご自宅へ伺った際、故人様の娘さんがいらっしゃいました。
部屋の奥からじっとこちらを見ているだけで、会話をすることもありませんでした。
ただ「お父さんをどこかに連れて行っちゃうんだ」という視線を感じたときは、すごく辛かったです。
しかし、ひとりの担当者としてご遺族のみなさんに感謝していただけるように、最善の行動を取らなければなりません。
辛い気持ちをぐっとこらえて、ご遺体をお預かりしました。

お通夜が無事に終わり、娘さんに何かしてあげたいという気持ちが強くなりました。
そこで、お花屋さんで小さなブーケを作ってもらいました。
そして明日の葬儀の最終確認をした際、娘さんに「明日お父さんとお別れになるけれど、もしよかったらお別れにプレゼントしてあげたらどうですか?」とブーケをお渡ししました。
どんな反応をされるか不安でしたが、その時は黙って受け取ってもらえたんです。

次の日、お花入れを行った時にその小さなブーケも一緒にお棺に入れて出棺されるのを見届けました。
その後お母様に聞いたお話なのですが、実はお渡ししたブーケを持ったまま寝てしまうほど娘さんは喜んでくれていたんだそうです。
その時に「何気ないことでも、やってよかったな」と思いました。

葬儀後には、四十九日に向けて様々な準備が始まります。
市役所で行う手続きなどをご説明する必要もあり、改めてご自宅に伺うことになりました。
その時、これまで一度も会話できなかった娘さんが「ありがとうございました」と初めて私に声をかけてくれたのです。

お母様にお礼をしなさいって言われたのかもしれませんが、ほんの少しの心遣いが悲しみを癒すお手伝いに繋がったんじゃないかと強く感じた出来事でした。

伊藤様の小さな心配りが、娘さんにとってはとても強い思い出になったかもしれませんね。
伊藤:少しでもお父様の死を乗り越えるきっかけになっていたら良いな、と思いますね。
また、苦労したことと言えば、入社2年目に新店舗を突然任されたことですね。

十全社流!地元コミュニティを活かして地域に根付く

鋸南町は千葉県南部に位置する
大抜擢ですね!様々なご経験をされていたことが決め手だったのでしょうか。
伊藤:そうですね。
過去の職務経歴を評価された事に加え、幸運にも良いお客様に恵まれたこともありました。
当時、私の担当したお客様のリピート率がとても高かったんです。
その結果、鋸南町の新店舗を任せてもらうことになりました。

もともと当社は「とりあえずやってみてダメならまた変えればいいよ」という考え方なんです。朝令暮改どころか、朝令夕改といえるくらいかもしれません。

鋸南町はいわゆる田舎の小さな町です。
当社が出店しても、都会から来た会社に対しては警戒心を持つ方が多い土地柄でした。

たしかに田舎はコミュニティが強固なイメージがありますね。
伊藤:そこで、まずは当社のイメージを変えることから始めました。
鋸南町の人を積極的に採用して、事務員さんから配膳のスタッフまで全て地元の人に担当してもらうようにしました。

すると「葬儀をどこに頼もうか?」という話になった際に「知り合いが十全社で働いているからお願いしてみよう」という流れができて、次第にご依頼をいただけるようになりました。
葬儀については皆、何が分からないかも分からないという方が多いと思います。
分からないことが分からないと、質問することもできませんよね。
不安も多く慣れない葬儀というイベントだからこそ、見知った人が従業員として働いている会社なら安心してご依頼をいただけると思いました。

また、一度でも当社で葬儀をあげていただけることで信頼関係が築けますから、その後は自然とご依頼数が増加しました。

地元出身の方に働いていただくことで、しっかりと地域の皆様との信頼関係も築くことができたと思います。
人間関係が強固な地域ならではの方法ですが、これが非常にうまくはまりました。

また店舗運営を行うにあたり、お客様に営業マンになっていただくことも目指しました。

たとえばAさんとBさんがいて、お二人がとても親しい関係だとしましょう。 もしAさんと私が親しくなれば、Bさんと親しくなくてもAさん経由で「十全社っていい会社だよ」と口コミで営業活動に繋がると思いませんか?

1日の時間はみんな24時間で平等に与えられています。
ですから、人と繋がることで私のコピーを作って、24時間を36時間にしたり48時間に増やそう、と考えたんです。
その間に私は違う仕事をすることもできますしね。

ただ、1人で自分のコピーを増やすのは限界があります。
そこで地元の料理屋さんやお花屋さん、ギフト屋さんと提携することで従業員だけではない、新たな人脈を開拓することを目指しました。

すると十全社と取引していてよく知っているからと、お取引のあるお料理屋さんやギフト屋さんからご家族の葬儀のご依頼をいただくことが増えました。

このように、どんどん地域に入り込んで地元に深く関係する方を引き入れていくのが、十全社には適したやり方なのかなと思っています。

なるほど、それが現在の安定に繋がるわけですね。
伊藤:その通りです。

貴社では、お客様に対するちょっとした気遣いも大切にされているように感じました。
そのような風土が整った要因は何だとお考えですか。

伊藤:葬祭ディレクターは経験を積めば積むほど「印象に残る葬儀にしたい」という思いが強くなると思います。 そうした思いが「より思い出深い式にしよう」と行動を促すのかもしれません。

また、葬儀後にアンケートを書いていただくので、ちょっとでもいい結果をいただきたいという思いもあるはずです。
やはり、やったことを評価してもらえるのは誰でも嬉しいですからね。

ですからアンケートを回収できるか、ご遺族からご回答をいただけるか、ということも大切にしていて、業績評価にアンケートの回収率も反映されています。 内容ももちろんですが、回答をいただけるような良い葬儀にしていこうという意識も強いと思います。

そういった思いが結果的に他社との差別化に繋がってほしいですね。

差別化を図るため新サービスと事業を展開!

今後も葬祭業界は成長を続けると見込まれていますが、新たなサービス展開などは考えていますか。
伊藤:そうですね。
今後も葬儀の件数自体は増加傾向が続くと思います。
ただ、葬儀の規模は縮小していますから、売り上げは減少していくことになるでしょう。
こればかりは時代の変化ですから、仕方ありません。

今は家族葬の需要が非常に増えているので、昔のように大きな祭壇の準備をしたり、人が大勢来る葬儀は減りました。
だからこそ、他の葬儀社さんとの差別化が重要になってくると感じています。

そこで現在開発に注力しているのが、オンライン葬儀です。

オンライン葬儀とはどういったものでしょうか。
伊藤:葬儀を行う上で大切なのは、たくさんの人々の意向だと考えています。
その意向をきちんと満たすことが重要です。

そこで「スマートフォンひとつで全てが満たせる葬儀を作ろう!」をコンセプトにオンライン葬儀を立ち上げることにしました。

当社のオンライン葬儀はQRコードをLINEやメールなどで共有することで、葬儀が行われている様子をどこからでも確認することができます。
それだけでなく、お供物の注文や香典のお振込みまでオンラインで簡単に行えるんです。
参列されている方の確認や喪主様のご挨拶など、会葬者の皆さんが気になる情報もさっとチェックできます。

遠方に住んでいて葬儀に参列できない親族や「家族葬だから」と参列をお断りされた会社関係者の方なども、このようなオンライン葬儀であれば気軽にご参列いただけるはずです。

たくさんの参列者が参加する葬儀はご葬家の負担も大きいものです。
ですから、喪主様、ご親族、会葬者がそれぞれ一番押さえたいところをきちんと押さえたサービスとして更に発展させていければいいなと考えています。

貴社では生花部門をはじめ、様々な事業を内製化されていますが、どのような経緯で内製化を進められたのでしょうか。
伊藤:まず内製化することで、新たな利益を生むことができるのは大きな魅力です。
葬儀をめぐる環境がどんどん変わっている中で、生き残りをかけた事業でもあります。

10年ほど前に家族葬という言葉が生まれた時、今後はどんどん家族葬が浸透していくだろうなという予感がありました。

家族葬が浸透すれば、たくさんの会葬者をお招きするような規模の大きな葬儀は自然と減りますよね。 すると、今の雇用を維持できるか?という問題になります。

そこで、会社を支える新たな柱を作ろうという話になりました。

株式会社十全社のグループ企業が運営するThe北海道ファーム
なるほど。農業を始めたのもこうした考えからなんですね。
伊藤:農業を始めようと考えたきっかけは人間社会を支える衣食住のいずれかの事業であれば、持続可能なビジネスになると考えたことでした。
紆余曲折もあってすぐに「お米作りをしよう!」と決まったわけではありませんでした。
しかし、日本人は必ずお米を食べるので、良いビジネスになるのではという予感はありましたね。

農業の経験があるのは実家が兼業農家だった私だけでしたが、北海道で行うような大規模な農地ではありませんし、私も経験者とは言い難かったです。
ですから最初にお米を作ろう!と言い出した時には「大丈夫?」とか「お米作りは簡単じゃないよ」と社員たちからかなり心配されました。



そういった反応があった中で、決断の決め手は何だったのでしょうか。
伊藤:「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残るのは、 変化できる者である」という有名な言葉があります。 また、当社会長の言葉に「人は見たくない現実から目をそらして、見たい現実しか見ようとしない」がありました。

つまりこれから先、生き延びるためには「見たくない現実をきちんと見て時代に合わせて変化する必要があるはずだ」と考えたんです。 今の状況に「大丈夫だよね」「きっと平気だよね」と安心するのはとても簡単です。 ですが世の中はどんどん変化していますから、見たくない現実が見えたときこそ新しい事業を始めるタイミングなんだと思います。 ですから今このタイミングでやれるうちにやろう!という考えが農業のスタートに繋がりました。

他にも、将来的に返礼品の内製化に着手したいという思いが長年ありました。 商品を作って返礼品にすることができれば、新しい利益を生むことにも繋がります。 不安が全くないわけではありませんが、現状維持は衰退を意味します。 失敗を恐れて何もしないよりも挑戦しようという気持ちでいました。 それに、もしダメだったら止めればいいとも考えていました。

不安がある中でも、変化を求めてスタートされたんですね。
ほぼ0からのスタートだったと思いますが、たくさんの苦労があったのではないでしょうか。

伊藤:一番印象深かったのは事業をスタートしたときですね。
北海道ファームを始めたのですが、最初にいただいた農地に苦労しました。
もともと跡取りのいない高齢夫婦が管理されていた場所で、田んぼの条件がとても悪かったんです。

たとえば稲刈りの時期になっても田んぼの水がはけ切らず、泥でズブズブの状態でした。
また肥料が田んぼの中で偏ってしまい、場所によってはドブのような匂いがしていたんです。
まずこうした条件を改善するところから始めることになりました。

何から手をつけたらいいのかご近所の農家さんに聞いて回ってみたところ「田んぼから藁を出さないといけないんだよ」と教えてもらいました。
というのも、北海道の冬は雪が積もりますよね。
田んぼに刈り取った藁をそのまま放置しておいても土に還らないんだそうです。
そのまま根雪の下になって春まで残ると、結果的に栄養が偏って水が匂ってしまうんです。

そこでまずは社員総出で北海道に行き、田んぼから藁を全部運び出すことから始めました。
私も北海道に行って藁だしをしました。
最初は十全社本部から北海道に送った3名を中心にスタートしましたが、今ではほとんどが現地採用スタッフによって運営されています。

先ほどお話しいただいた、鋸南町での新規出店の時と同じですね。
伊藤:そうです。
最初に中心となるスタッフを本部から派遣します。
そして、現場に十全社の考え方や意識が浸透したら、どんどん自立してもらう…そういう流れを大切にしています。


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