納棺師の仕事とは?内容や種類、向いている人の特徴などを紹介
納棺師、湯灌師
公開日:2025.12.03
納棺師の仕事は『おくりびと』として映画化されるほど、高い社会的意義を持ちます。ただ、具体的に「どのような仕事なのかわからない」という方も少なくありません。本記事では納棺師の仕事内容ややりがい、向いている人の特徴などを紹介します。納棺師に興味のある方はぜひ参考にしてください。
納棺師の仕事内容
・末期の水を行う
・湯灌(ゆかん)をする
・故人様の着替えを行う
・死化粧を施す
・エンバーミングを施す
・ご遺体を納棺する
故人様とご遺族のお別れをサポートする納棺師の仕事は、多岐にわたります。ここでは、納棺師の具体的な仕事内容を紹介します。・湯灌(ゆかん)をする
・故人様の着替えを行う
・死化粧を施す
・エンバーミングを施す
・ご遺体を納棺する
末期の水を行う
末期の水(まつごのみず)は、故人様の喉を潤し、穏やかな旅立ちを願って行われる大切な儀式で、別の言い方として「死に水」と呼ばれることも多いです。ご遺族が綿や筆に水を含ませ、そっと唇に触れさせる行為には、「あの世で喉が渇かないようにいてほしい」という思いと感謝を伝える意味が込められています。宗派や地域によって実施の有無や方法は異なりますが、故人様と静かに向き合う大切な時間であることを覚えておきましょう。
湯灌(ゆかん)をする
●専用の浴槽を使って、洗髪を含む全身を洗い清める
●タライの水に沸かしたお湯を注ぎお体を洗い清める
●アルコールを含んだ脱脂綿などでお体を拭き清める
湯灌は、故人様の旅立ちを清らかに見送るために行われる儀式です。身体を丁寧に洗い清めることで「現世の汚れを落とし、来世へ導く」という祈りが込められています。地域によって実施の有無は異なり、清潔を保つ目的であれば病院で行われるエンゼルケアのみで対応する場合も多いです。●タライの水に沸かしたお湯を注ぎお体を洗い清める
●アルコールを含んだ脱脂綿などでお体を拭き清める
しかし、湯灌は単なる処置とは異なります。故人様への敬意を形にする儀式として、大切に受け継がれているということを意識して行いましょう。
故人様の着替えを行う
故人様のお体を清めた後には、旅支度や白装束などの宗教や宗派の作法に沿った衣装、あるいは故人様が生前好んでいた服に着替えを行います。これは、旅立ちにふさわしい姿へ整えるだけでなく、「その方らしさ」を大切にして見送るための大切な工程です。ご遺族の希望を反映しやすい部分でもあり、好きだった色や思い出の服を選ぶことで、より温かいお別れの時間をつくることができます。死化粧を施す
死化粧は、故人様の顔や髪、身だしなみを整え、生前の面影に近づけるために行う大切なケアです。ご遺族が故人様らしい姿と再び向き合うことで、気持ちの整理をしながらお別れを迎えられるよう寄り添う役割があります。また、故人様の尊厳を守るという意味も大きいです。
髪をドライシャンプーで整え、顔を清潔にした後、ひげ剃りや薄化粧を施すなど、一般的なメイクと同じ工程で自然な表情へ近づけていきます。
エンバーミングを施す
| 仕事内容 | 資格の有無 | |
| 湯灌 | 儀式的な観点から故人様のお身体を洗い清める | なし |
| エンバーミング | 科学的な観点からご遺体に衛生保全の処置を施す | あり※ |
エンバーミングは、ご遺体を消毒・殺菌し、防腐や修復を行う科学的な処置で、必要に応じて実施されます。湯灌が儀式的な観点から身体を洗い清めるのに対し、エンバーミングは衛生保全を目的とした専門技術であり、日本遺体衛生保全協会(IFSA)の資格取得者のみが可能です。長期間の安置や海外搬送が必要な場合にも効果を発揮します。納棺師の中には、この資格を取得して湯灌とあわせて対応できるようにする方もいます。
ご遺体を納棺する
ご遺体を納棺する工程は、旅立ちの準備の締めくくりとしてとても重要です。故人様を丁寧に棺へお納めし、生前愛用していた品や思い出の品などの副葬品も一緒に入れます。かつては家族が直接納棺していましたが、現在は納棺師や葬儀社が主体となり、ご遺族は手を添えて見守る形が一般的です。
故人様を傷つけないよう細心の注意を払って進め、最後に全員で合掌し、一礼して儀式を締めくくります。納棺するタイミングについては、お通夜の前が一般的です。
【就業先別】納棺師の仕事内容の違い

【納棺・湯灌専門の会社】納棺師の主な仕事内容
・納棺、湯灌
・特殊修復
・安置管理 など
納棺・湯灌専門の会社では、故人様のケアに特化した業務を担います。納棺作業を中心に湯灌、死化粧、着替えなど一連の儀式的な処置を行うのが特徴です。単に棺へお納めするだけでなく、「納棺の儀」に沿って姿を整え、生前の面影を大切に保つことが求められます。葬儀運営には関わらず、技術を磨きながら丁寧なケアを提供することが、この職場ならではの働き方です。・特殊修復
・安置管理 など
【葬儀会社】納棺師の主な仕事内容
・納棺、湯灌
・葬儀進行
・事務作業
・搬送 など
葬儀会社で働く納棺師は、故人様のケアに加えて、葬儀全体の運営にも関わる点が特徴です。納棺や死化粧といった専門業務に加え、葬儀の進行、会場での案内・誘導、ご遺体の搬送、書類作成など事務作業も担当します。式場準備や片付け、遺族対応を行うことも多く、幅広い業務に携わるのがこの職場ならではの働き方です。・葬儀進行
・事務作業
・搬送 など
この職場では、故人様へのケアと並行して、ご遺族が安心して式に臨めるよう全体をサポートする総合力が求められます。
納棺師の仕事のやりがい
・故人様の「最期の姿」を整え、感謝される仕事であること
・一つひとつの施術がご遺族の心の支えになること
・専門技術を磨き続けられる職業であること
納棺師のやりがいは、故人様の最期の姿を丁寧に整えることで、ご遺族が安心してお別れできる環境をつくれる点にあります。湯灌や死化粧などの専門技術を用いたケアにより、ご遺族の悲しみや不安を和らげ、「ありがとう」と直接感謝の言葉をいただけることも多いです。・一つひとつの施術がご遺族の心の支えになること
・専門技術を磨き続けられる職業であること
加えて、技術を磨きながら人の心に寄り添えるため、責任感と達成感の両方を実感できる仕事でもあります。
納棺師の仕事に向いている人の特徴

・向上心を持ち、責任感を持って仕事に取り組める人
・人の気持ちに寄り添える人
・強い精神力を持っている人
・繊細な作業が得意で、体力がある人
・人の気持ちに寄り添える人
・強い精神力を持っている人
・繊細な作業が得意で、体力がある人
納棺師は人の死に直面するという意味で、ほかの仕事と大きく異なります。大切なのは「自分が納棺師に向いているかどうか」を冷静に見極めることです。納棺師の仕事に向いている人の特徴は、以下の4点があげられます。
向上心を持ち、責任感を持って仕事に取り組める人
納棺師の仕事は、一度行った儀式のやり直しができないため、すべての作業に細心の注意と高い技術と責任感が必要です。そのため、常に向上心を持ち、新しい技術や知識を学び続けられる人が向いています。また、日々の業務を通じて経験を積み、技術を磨きながら、故人様とご遺族に心安らぐ最期の時間を提供する姿勢が重要です。人の気持ちに寄り添える人
納棺師の仕事は、単にご遺体を整えて棺に納めるだけではありません。納棺師に求められるのは、ご遺族の気持ちに寄り添い、安心して故人様を送り出せる環境をつくることです。葬儀の場では、ご遺族は深い悲しみに包まれ、時には取り乱すこともあります。そのような中で、何を求められているか、どのように振る舞うべきかを考えながら行動できる人が、納棺師には適任です。強い精神力を持っている人
納棺師には、ご遺族に寄り添う力と同時に、強い精神力が求められます。常に人の死と向き合わなければならず、感情が高ぶったり体調に影響が出たりしてしまうと、儀式そのものに支障をきたすこともあるからです。さらに、死に直面する経験を日々繰り返す中でも、落ち着いて業務を遂行できる力が必要不可欠です。この精神力は、責任感や志の強さとも言い換えられ、納棺師として不可欠な資質といえます。繊細な作業が得意で、体力がある人
納棺師の仕事は、死化粧やご遺体の搬送、着替えなど、繊細さと同時に一定の体力が求められる作業が多く含まれます。細かい手作業で美しく整える技術が必要な一方、棺への納棺や長時間の立ち作業など肉体的負担も少なくありません。そのため、丁寧な作業を苦にせず、体力面でも安定して業務をこなせる人が向いています。納棺師になるための資格・目指す方法
・専門学校に通って知識と技術を習得する
・納棺・湯灌専門の会社または葬儀会社に就職する
納棺師として働くために、必須の資格はありません。・納棺・湯灌専門の会社または葬儀会社に就職する
納棺・湯灌専門の会社や葬儀会社に納棺師として就職し、実務経験を積みながら技術を習得していくのが一般的です。専門学校に通う道もあり、基礎知識や技術を学ぶことで、納棺の作法など現場で役立つスキルを身につけられます。
なお、会社によって仕事内容や条件は大きく異なるため、よく求人を見てから職場を探しましょう。
困ったときには、専門の転職サポートサイト「葬祭ジョブ」を活用すると、自分に合った職場が見つかります。葬祭業界に特化したサイトで、信頼と実績を持つキャリアアドバイザーが書類作成から入社後のアフターフォローまで手厚くサポートします。
納棺師の仕事に関するQ&A
・Q.納棺師の仕事はきついって本当?
・Q.納棺師の年収・給料はどれくらい?
・Q.納棺師を目指す場合、取っておくと役立つ資格はある?
最後に、納棺師の仕事に関してよくある疑問とその回答を紹介します。納棺師の仕事の大変さや年収、役立つ資格の情報などを見ていきましょう。・Q.納棺師の年収・給料はどれくらい?
・Q.納棺師を目指す場合、取っておくと役立つ資格はある?
Q.納棺師の仕事はきついって本当?
A.納棺師の仕事は、体力と集中力が求められるため、人によっては「きつい」と感じることがあります。
納棺師の仕事には、体力と集中力が求められます。死亡後のご遺体は硬直しており、体を動かすだけでも大変です。とくに経験の浅いうちは、1件の納棺でも大きな負担となるでしょう。場合によっては1日に複数の現場を回ることも少なくありません。また、ご遺族の悲しみに寄り添いながら、死化粧や着替えなど繊細な作業を正確に行う必要があり、精神的な集中力も求められるため、きついと感じる人もいるでしょう。
Q.納棺師の年収・給料はどれくらい?
A.年収400万円前後が目安ですが、勤務先により大きく異なります。
納棺師の年収・給料は、勤務先によって大きく異なります。納棺・湯灌専門の会社では、給料はやや低めですが、納棺師としての業務に専念でき、技術や経験をじっくり積むことが可能です。一方、葬儀会社では、納棺以外の業務も任されることがありますが、給与水準は比較的高く、平均年収は400~500万円前後。管理職や大手企業ではそれ以上になるケースもあります。地域や会社形態によっても差があるため、注意しましょう。
【就業先別】納棺師の給料・待遇
| 給料 | 待遇 | |
| 納棺・湯灌専門の会社 | 一般的に低い傾向にある | 納棺作業が中心であるため、納棺師としての仕事に集中できる |
| 葬儀会社 | 一般的に高い傾向にある | 納棺作業に加え、さまざまな仕事を任されることが多い |
Q.納棺師を目指す場合、取っておくと役立つ資格はある?
A.ほとんどの企業で普通自動車運転免許が必須です。
また、エンバーミング資格や葬祭ディレクター資格があると役立ちます。
納棺師になるために必須の資格はありませんが、納棺師として働くためには、多くの企業で普通自動車運転免許が必須条件となっています。また、エンバーミング資格や葬祭ディレクター資格があると役立ちます。
また、取得しておくと役立つものとして、エンバーミング資格や葬祭ディレクター資格があります。とくにエンバーミング資格は、ご遺体の衛生管理や防腐処置に関する専門知識を身につけられるため、納棺師としての技術力向上やキャリアの幅を広げるうえで非常に有効です。葬祭ディレクター資格も、葬儀全体の理解が深まり、現場での判断力や対応力向上に役立ちます。
納棺師の仕事を理解して、就職・転職を目指そう
納棺師の仕事は、故人様やご遺族に寄り添いながら、専門的な技術で納棺や湯灌、死化粧を行う重要な職業です。体力や精神力、繊細な作業への注意が求められますが、やりがいも多く、技術を磨くことでキャリアを広げることができます。就職・転職を考える際には、勤務先や会社形態によって業務内容や給与に差があるため注意しましょう。
納棺師を目指すなら、まずは自分に合った職場を見つけることが大切です。葬祭業界に特化した転職・就職サポートサイト「葬祭ジョブ」なら、未経験でも安心して相談ができます。興味がある方は、ぜひ登録をして仕事内容や給料・待遇を確認し、納棺師としての一歩を踏み出しましょう。お気軽にお問合せください。
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