納棺師ってどんな勉強をしているの?研修会を見学させていただきました。
今回のインタビューでは、4月にNK東日本へ入社した方の研修会を見学させていただきました。入社する人の半数が新卒採用というNK東日本では、納棺師としてのスキルや接遇について半年ほどの時間をかけて研修を行っておられます。お邪魔させていただいた際には、接遇における留意点や、就業規則の説明からスタートしていました。
黙々と作業を行うイメージが強い納棺師ですが、故人様を生前のお姿に近づけるためには、ご遺族様からのヒアリングを丁寧に行う必要があるため、コミュニケーションも非常に重要です。
また、ご遺族様のもとへ派遣される形で勤務をするため、移動中や業務中にアクシデントが発生し、時間通りに次の現場へ向かえない場合の情報共有の重要性など、サービスを滞りなく提供するために必要なルールの共有も行われていました。
指導内容を伺っていると、納棺師という職業がサービス業のひとつである、ということを改めて強く感じます。
納棺師さんの必須スキル!お着せ替えはどうやって行う?

それぞれを広げ、スムーズにお着せ替えできるように位置を整えてからお着せ替えがスタート。まずお着せ替えの前には、故人様の腕や手首をゆっくりとストレッチし、固まってしまった関節をほぐします。

お体を拭き終わったら経帷子や帯を着せ付けていくのですが、この時にどうすればスムーズにお体を起こせるのか、お体のどこを抑えると安定するのかなど、細かなスキルについての説明も行われます。
特にお着せ替え中は故人様のお体が揺れないようにすることと、故人様の顔をしっかりと見ながら作業を行うことは重要なんだそう。
どうしてもお着せ替えの作業に没頭してしまうと丁寧さに欠ける所作に見えてしまうため、作業中の視線をどこに向けるのかも大切にされているのだそうです。
そのあと腰に帯を当てて、起こした体を仰向けに戻して両腕もお袖に通し、経帷子の前を閉じてから帯を締めて、一連のお着せ替えが終了します。
NK東日本では、このお着せ替えの作業を全て体にかけた布の下で行います。そうすることで、故人様のお体を直接見ることに抵抗のある方も納棺式に参列していただくことが可能になるのです。
お着せ替えの作業は思いのほか体力仕事!

もちろんその作業の合間に経帷子にお着せ替えしますし、何よりご遺族様の目の前で行うわけですから、お体を起こしたり寝かせたりすることだけに集中するわけにはいきません。
今回の研修では、研修参加者が交代で故人様役をしていたので、普通の体格の女性ばかりでしたが、故人様のお体の大きさや体重は人それぞれ。
どういった環境での作業になるのか、お体が大きい方なのかなど、現場に行かなければ分からない状況に柔軟に対応することも、納棺師として重要なスキルだと感じました。
一人前の納棺師になると、お体を起こす際のコツや、起こした後どういったポーズであればリラックスした状態に見えるのかといった細やかな配慮までできるようになるそうです。
「今研修を受けている人たちも、慣れてくればどんどんできるようになりますよ」と、大森さんはお話をしてくださいました。
お体が見えないように…住宅事情も解決できる「見せるお着せ替え」

もちろん最初は覆いのない状態から練習をスタートし、徐々にご遺族様の前でもお体を見せることなくお着せ替えできるようになっていきます。 インタビューでも「ご遺族様の前でお着せ替えできるスキルはとても大切」と、大森さんがお話をされていました。
最近はふすまのない家も多く、お着せ替えのために別室を用意できない場合や、逆に別室でのお着せ替えに不安を抱かれるご遺族様もおられるため、このスキルを身に着けておくとそういったケースにも対応できるのだそうです。もちろん故人様のお体を直接見ることに抵抗のある方もいますから、そういう方でも不安なく参加できるというのは大きなアドバンテージだと感じます。
スーツでもワンピースでも!最期のお別れもおしゃれにできる。
今回の見学では経帷子のお着せ替えのみでしたが、ご遺族様の要望によっては故人様が生前身に着けておられたお洋服やお着物を使用することもあり、これから半年間の研修で様々な服へのお着せ替えも練習されるんだとか。実際、インタビューに応じてくださった大森さんの著書「最後にありがとうと言えたなら」には、生前お母さまが気に入っておられたというワンピースを着せたいご遺族様や、スーツ姿でお父さんをお見送りしたい、というご遺族様のお話が登場します。こうした種類にとらわれないお着せ替えが可能なのも、ひとえに納棺師さんの努力のたまものなんですね。今後はさらにメイクや含み綿などを使用してお顔を整えるための方法など、納棺師として必要なスキルに関して勉強を進め、約半年後の社内試験に向けて研鑽を積まれます。ご遺族様にとって、故人様と共に過ごせる最後の時間である納棺式では、実に様々な状況に応じた臨機応変な対応力も求められます。こうしたスキルを身に着けることで、一つでも多くのご要望に応えることができるのだと感じました。
さいごに
今回の見学では、ご遺体役を体験させていただきました。経帷子のお着せ替えを体験してみると、とても丁寧に体に触れていただいていることが改めてよくわかります。
納棺式に参加した経験はありませんが、細かな部分まで気を配ったお着せ替えをしていただきお棺に納めていただくのは特別な時間になるだろうと、非常に短い時間の体験ながら改めて強く感じました。
それと同時に「自分が死んだときは、納棺の時はこの服で!」とわがままも叶えてもらえるんだという新たな発見も。
1日に多い時では3件もの納棺式を行うこともあるという納棺師さんは、精神的にも体力的にも非常にタフな仕事であると改めて感じられた貴重な時間となりました。
大森さん、NK東日本の皆様、ありがとうございました!