株式会社大原セレモニーハート / 新会館INORIEオープン記念!大原セレモニーハート社長インタビュー|葬祭ジョブ

インタビュー

掲載日:2023年05月08日

今回は第一回目のインタビューでもお世話になった、江東区大島に本社を置く大原セレモニーハート様にお邪魔しました。
新たな葬儀会館「小さな家族葬サロンINORIE~イノリエ~」のオープンにまつわるお話を中心に、活発な社内コミュニケーションの秘訣などを伺います。


株式会社大原セレモニーハート
代表取締役 茂木 圭吾さん



新会館オープン!設立の経緯とこだわりを聞く

本日はどうぞよろしくお願いします。
前回のインタビューから1年ほど経過しましたが、新しい会館をオープンされましたね。新会館「小さな家族葬サロンINORIE~イノリエ~」(以下「イノリエ」)を建設された経緯をぜひ教えて下さい。

2022年に開館した「小さな家族葬サロンINORIE~イノリエ~」。周囲の住宅街にも馴染む、マンションのような外観が特徴的です。
茂木:既存会館の稼働が順調に伸びていたこともあり、最近はお客様をお待たせする時間が長くなっていたことと、後の事業展開を考えた時に、コンセプトの異なる会館が必要だと考えていたため、建設に至った次第です。

イノリエは既存の会館と比べると比較的小規模で、自宅のリビングにいるような雰囲気で、落ち着いて葬儀に臨んでいただける会館を目指しました。
そのため、施工は大手ハウスメーカーに依頼しました。

内装は柔らかな雰囲気を意識し、光も暖色系を使用したりと、細部までこだわったため、かなりイメージに近い仕上がりになったと自負しています。

イノリエのプランを拝見させていただくと、家族葬の中では価格設定が高めに感じましたが、その分、ご自宅で過ごしているような温かな雰囲気とプレミア感を大切にされているわけですね。
茂木:そうですね。
ただ、ご依頼を頂く方の中には費用的に利用が難しいお客様もおられますので、そのような場合には柔軟に対応することも大切にしています。

例えば、式のボリュームを小さくすることで価格を抑えることもできますから、様々な工夫をして、お客様の満足度を高められるようにしています。 イノリエをオープンしたことで、コンセプトと価格の幅を広げることができたので、 お客様のご要望に対してより柔軟に対応できるようになりました。

新会館の建設はいつ頃から計画されていたのでしょうか。
茂木:新しい会館を作ることは5年以上前から考えていました。
ただ、建設に着手するにあたっては、地域の他の葬儀社さんとは少し違う戦略に挑戦してみようと考えていました。

中小の葬儀社はドミナント展開をする会社が多いですが、当社はすぐ近くにコンセプトの異なる会館を作る事で「近場で会館が選べる葬儀屋さん」という形を目指しました。

ドミナント展開の場合、同じ地域とはいえ別の場所に出店するわけですから、その場所の地元住民の方の反対など、オープンまでのリスクがあります。しかし、すぐ近くでコンセプトを変えて建設ができれば、そういったリスクもいくらかは軽減できます。

そのような考えから徒歩1分圏内にイノリエを建設されたのですね。
では続いて「イノリエ」へ込めたこだわりについて伺えますか。

茂木:先ほどお話をさせていただいた通り、ハウスメーカーに建てていただいたことによる柔らかい雰囲気や優しさ、温かみのある調光が基本的なこだわりです。

家にいるような感覚になっていただけることを目指し、五感に柔らかく訴えかけられる造りを大切にしました。

また、相続の問題をはじめ、色々なお困りごとのあるお客様も多いですから、葬儀後には税理士さんに相談もできるようなスペースもつくりました。ネット環境をお持ちではない高齢のお客様も多いので、Zoomを使用してオンラインで税理士さんと打ち合わせができる場所です。

ただ税理士さんを口頭で紹介するだけではなく、画面上とはいえ面識を持っていただくことが重要ではないかと思っています。そういった意味ではコロナ禍で加速したオンラインを活用したサービスをもっと増やしていけたら良いと思いますね。

また、今後は色々なお客様の死生観に応えられるサービスを充実していきたいと考えています。

これまでとは異なるニーズに応えられる会館を目指す。

色々な生死観に応えられるサービスという点を、もう少し具体的に教えていただけますか。
「イノリエリビング」と「イノリエシアター」は、今の葬儀の形にとらわれない様々なイベントにも活用されている。
茂木:例えば、お坊さんを呼んで葬儀はしたくないけれど、故人様を偲んで食事会はしたい、という方もおられます。そういったご遺族へは、ライフストーリームービーという故人様の人生を振り返れる動画を制作させていただき、モニターで上映しながら団らんの時間を過ごしていただくこともできます。

イノリエには「イノリエリビング」というお部屋と「イノリエシアター」というお部屋があります。シアターには大きなプロジェクターをご用意していますので、綺麗で大きな画面でご視聴いただけます。

実際に、コロナ禍のため葬儀はご家族3人でお見送りをして、一周忌にあたって20人くらいでお別れ会をしたいというご相談を頂いた際にも活用いただきました。

また、近隣にお住まいでご依頼を頂く方は、比較的高齢の方が多いのですが、遠くてお墓参りに行けないという方が多くいらっしゃいます。そうした方向けにスタッフが年末年始にお墓のお掃除をしたり、お墓参りを遠隔で行う代行サービスなども考えています。

ありがとうございます。
シアターを活用した葬儀は、結婚式などブライダルのテイストも感じられますね。
こうしたサービスを開始されるにあたって、参考にされたものはありますか。

茂木:基本はホテルテイストを目指しています。
ただ、ホテル業界の方からお話しを聞くわけでは無く、自分自身でホテルに出向き、感覚を吸収したうえで反映することを大切にしています。

葬儀とブライダルは色々とリンクする部分がありますね。
例えばお花のテイストも、以前までの葬儀では菊が主流でしたが、近年は洋花が沢山使用されるようになってきました。

個人的に、ブライダルの中で重視されている親しい方や大切な方へ感謝の気持ちを表現する点は、葬儀との親和性も高いと思っています。 ですから、お別れの時にありがとうと感謝の気持ちを伝えられるような家族葬をもっと作っていきたいなと思っています。

ありがとうございます。

二つの会館のニーズの違いとは?それぞれの強みを聞く

「イノリエ」の稼働率の高さに、茂木様も驚いたそう。 一体なぜこんなにオープン直後から人気なのかを探ります。
今現在、イノリエとこれまで使用されていた本館ではご依頼の比率はどれくらいになっているんでしょうか。
茂木:大体6:4くらいです、イノリエが4ですね。
イノリエをご利用いただくのは、喪主様が比較的若いケースが多いです。
ほとんどの場合、事前にホームページをご覧になって、イノリエのテイストを気に入っていただいた方です。

やはり少ない人数で家の中にいるような感覚になれることや、ゆっくりと自分たちの空間でお別れができる、というのが人気の理由なのかなと思っています。
イノリエは規模が小さくても、ぎゅっと濃いお別れをしたい方向けかもしれません。

それに対して本館は、どちらかというと会葬者が沢山いらっしゃって、一般の方も一緒にお別れをしたい、という方がご利用される事が多いです。しっかり広いスペースが確保できるので、お食事も参列された方々で召し上がりたいというニーズにもお応えできるからだと思います。

はっきりとニーズが分かれているんですね。
イノリエの建設前に想定していた利用頻度と、実際の依頼件数を比べてみていかがでしょうか。

茂木:イノリエの利用頻度は想定よりもずっと高いんですよ。開業後1年くらいは月3件前後のご依頼があるくらいかと考えていましたが、今では週に3件程度ご依頼を頂いている状況です。

週に3件!ハイペースですね。
こうしたたくさんのご依頼がくる理由は何だとお考えですか。

茂木:これまで100年、地域に寄り添い、何よりもお客様とそのご家族のことを考えた仕事をする、ということを大切に経営をしてきました。
そうした社風のおかげか「大原セレモニーハートで葬儀をやって良かった」と言ってくださった方が別の方にご紹介をして、といった流れでご依頼がどんどん増えているのだと思います。最近では、お寺さんのご紹介や、介護施設からご依頼を頂くことも増えました。

また、イノリエを建設する際に反対運動が起きなかったことも、長年地域に寄り添った経営をしてきた結果だと感じています。
やはりなかには葬儀場がちかくにできることを良く思わない人もおられると思います。

ましてや住宅地として資産価値もどんどん上昇している地域ですから、反対のご意見もいただくことになるとは考えておりました。 コロナ禍での建設となりましたが、ご説明の際には「父の時にはお世話になりました。地域に大切な施設を作ってもらってありがとうございます」とお言葉をいただいたりもしました。

イノリエがオープンしてからも、葬儀場でありながら、公民館のような形で使用したいというご依頼をいただくこともあり、このことは地域社会に馴染むことを大切にし、お客様第一で続けてきた結果が現れていると感じます。

そうなんですね。
建物のお話に戻ってしまいますが、イノリエのコンセプトである柔らかさが景観とマッチしていることも良い影響を与えたのかなと感じました。

茂木:そうですね、大手ハウスメーカーに依頼して建設をしたため、建設現場にハウスメーカーの社名が入った垂れ幕がかかるんですが、その段階ですでに葬儀場とは思えない建物としてスタートしていたのかな、と思います。
実は地域の方々からは「きれいな外観でいいね」と評判なんですよ。

「イノリエ」という施設のネーミングや、外に掲げる看板のレイアウトなどは全て私がデザインを行いました。できるだけ葬儀場らしくない印象に仕上がるよう心掛けました。
そういったこともあって、葬儀の色を強く出さず、優しく柔らかい雰囲気というコンセプトをより大切にできたと思います。

そうだったんですね。 では命名された社長からぜひ、イノリエの名前の由来を教えていただけますか。
茂木:「祈りを重ね、亡き人を偲ぶ」という意味で名付けました。

また、当社では、古来より続く葬送儀礼文化を後世に伝えていく社会的責任を負っていると考えています。ですから、ふと手を合わせた時に、故人様が生きておられた時はこうだったな、という人の想いを未来に繋いでいけるような葬儀社になりたい、という意味も込められています。

「家」ではなくて、一重、二重と重ねていくという意味なんですね。
会社の目指すべき姿も表現されていて、とても素敵なネーミングですね。

社員のための環境づくり!新しい取り組みを聞く

以前取材させていただいてから1年が経過しました。
社員数も増えたことで規模感が変わってきたかと思います。社員のための働く環境づくりで新たに始めた取り組みはありますか。

茂木:今は、まだまだ続くコロナ禍ということもあって、社員全員が集まって頻繁に食事会をするのは難しいですよね。
ですから、お昼ご飯を皆で食べる機会があればコミュニケーションの促進になるかなと思い、お弁当を会社から提供するなどしています。

あとは、世代ごとの食事会を就業時間内にホテルで行うこともありましたね。その時は新型コロナウィルスの感染者数が減って、少し終息しつつあった時でした。社員同士でコミュニケーションを図る機会がなかった時期でしたから、とても楽しかったようです。

お店は、たとえ高くてもサービスの質が良く美味しいお店を選ぶ!というコンセプトから社員主導で決めてます(笑)。シフトも皆で調整して実施しています。

そうなんですね。
現場から経営者にそのような提案が上がってくるのは嬉しいですね。

茂木:そうですね。社員間のコミュニケーションが頻繁に行われているからだと思います。
私がコミュニケーションを取る時も、一方的にならないように気を付けていますし、ミーティングでも、お互いを尊重してチームで動くことの大切さを言い続けてきましたので、社員もそのあたりを良く理解してくれている結果なのかもしれないですね。

やはり葬儀というのはいつ依頼が入るか分かりませんし、自分が打ち合わせを行ったお客様の葬儀日程が、お休みの日に当たることも頻繁にあります。
スムーズに引継ぎを行うためにはコミュニケーションが重要ですから、こうした業務環境の中で自然と培われた風土なのではないかと思います。

ありがとうございます。
様々な葬儀社様でお話を伺っていると、有給消化や休暇取得の水準が高い会社ほど、引継ぎを大切にされているように感じます。
引継ぎを行う際に特に意識にされていることや、お休みを取得しやすくする工夫などはありますか。

茂木:毎朝、引継ぎのためにミーティングをしています。
そこでお客様の特徴やご要望について細かく共有していますので、お休みも何一つ不安なく取得できる環境です。

また、葬儀社はどうしても週末にお休みを取得しにくい業種です。そこで週末は社員のほとんどが出勤するシフトを組んで人員が手厚くなるようにしています。
そうすることで、土曜日や日曜日にお休みを取りたいという社員が複数人いても、安定して業務を行うことができます。週末にお休みが取得できれば、家族や友人との時間を作りやすくなりますしね。

それから、日曜日は「良いことを言う日」と決めているんです。

「良いことをいう日」ですか、どういった日なんでしょうか。
茂木:社員同士で「こんなことをお客様から言っていただいて、すごく嬉しかった」とか、この仕事をしていて良かったと感じた今週の出来事を話すというものです。
今週起こしてしまったミスについてはもう言わなくていいよ、という意味も込めています。

ミスはしたくてしているわけではありません。そのことは本人が一番理解しているはずです。しかし、そのミスについて上が色々言ってしまうと、それがプレッシャーになって新たなミスに繋がってしまうことも多いと思うんです。

そこで、今週あったミスではなく良いことを共有し合うことにしています。こうしたコミュニケーションのおかげか、本当にミスが少なくなりました。

前向きなコミュニケーションと、余計なプレッシャーを与えないことでミスが減ったんですね。
茂木:そうなんです。
あと最近は、LINEの効果も高いのではないかと思っています。

実は今、お客様とのやり取りはLINEを中心に使用しています。お客様もLINEだとお問い合わせがしやすいと好評です。
LINEであれば社員全員がお客様からのお問い合わせを確認して回答できますから、担当する社員一人の負担にならず、ミスを未然に防ぐことに繋がっているのだと思います。

また、撮影したお写真についてもデジタルデータでお送りしてご確認いただけますし、紙に印刷してお渡しをするといった時間を短縮できます。

様々な面でデジタルを活用されているんですね。
ありがとうございます。

今後の展開は「葬儀の後のお手伝い」を目指したい。

では今後、さらなるサービスの展開について何かお考えであればぜひ教えて下さい。
茂木:やはり葬儀後のサービスを展開していきたいと考えています。まだまだ葬儀社としてできることがあるはずです。

例えば、お年寄りの方であれば、何度も役所に行くのは身体的に負担が大きい状況の方も大勢おられます。
故人様が亡くなって心を痛め、やっとお骨になったというのに、その後2か月、3か月と手続きで慌ただしい状況が続き、すぐに現実に戻されてしまう方も多くいらっしゃいます。

ですから、そういったところに踏み込んでお手伝いが出来たら良いと思います。

確かに役所での手続きは特に時間がかかったり、何度も往復することが多いですよね。
茂木:そうなんです、ですからそうした部分を少し我々がお手伝いをすることで、楽になれるサービスを、ということを考えています。

新しいサービスを考える時に大切になるのは、地域社会の皆様に貢献できることは何なのか?という点を追求していくことだと考えています。

葬儀においても多種多様化する生死観に対して、デジタル化したり映像化するだけでなく、お寺さんがいらっしゃらないという場合でも、何か違った形でのお見送りを提供できたらいいね、と若いスタッフの中から上がるアイディアを、いつか世の中に商品として出していけたらいいな、と思っています。

葬儀に限らず、ご依頼が自然に増えていく状況にするのはとても難しいことですが、そういったポジションが目標です。その目標を達成するためには、1件1件の葬儀に真摯に向き合うことがまずは大切になります。

利益の追求ばかりでは、社員にも悪い影響があると感じたこともあります。バランスをうまく取るのが非常に難しい部分ですが、自然体の中で営業活動ができれば一番いいなと思っています。

それから、労働環境の整備にはもっと投資をしていきたいですね。葬儀業界はもう少し人材にお金をかけてもいいんじゃないかな、と個人的に考えていて、20代の伸び盛りの方たちをもっと伸ばしてあげられるシステムや、この業界の魅力を感じてもらえる環境にものすごく力を入れていきたいと考えています。

私は、社員によく「プライベートを大切にして、仕事は二の次に考えてね」と話をしていますから、会社としてもそうした土壌作りをもっと推進していけたらいいと思っています。

それに何より「プライベートを大切に」と言えば言うほど社員みんなが仕事を頑張ってくれるようにも感じます。
お客様に喜んでいただけるだけでなく、社員がやりがいを持って働けて、プライベートを大切にできる会社として進化していけたら最高ですね。

編集後記

約1年ぶりの再訪問となった大原セレモニーハート。社長の茂木様は終始穏やかに沢山のご質問にお答えくださいました。
新しくオープンした「イノリエ」に対する沢山のこだわりや、前回のインタビューの際に伺ったお話から変わった点など、大変興味深いお話ばかりでした。
これまでと同じように、地域に密着しつつ異なるニーズを発掘する手法は、今後様々な葬儀社でお手本とされる新しい経営の形になるのかもしれません。


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